彩生堂備忘録


店主:宮内義富、札幌在住。「本の力」「人の力」が必要な時代です。ものごとを、明治以降生まれた様々な思想や文学、社会学、医療や医学、性その他に関する学問・研究など、多面的な物差しで見ていくことの必要性も痛感します。
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高橋揆一郎『観音力疾走』

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 高橋揆一郎の小説は北海道立文学館で特別展が開かれている、と知り、訪れ、そこでしか販売していない『高橋揆一郎の文学』で初めて読む機会を得た。

 読んだ感想。少々びっくりした。こんな素晴らしい、人の魂に触れる作品を書いた作家だったのか、と改めて驚いた。

 今回読んだ中で、最も心に響いたのは「観音力疾走」である。てんかん持ちの子供を持つ女(ふさ)と結婚して所帯を持つと、その子供をかわいがる、乱暴者で無鉄砲、寡黙の男「坑夫伝吉」の物語を女の語りでストーリー構成するもの。

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 全体に人間本来が持っているはずのヒューマニズムといったものが溢れ、そしてこの本の作品論で詩人・ロシア文学者の工藤正廣氏が書いているフォークロアとしての語り文学を見事に体現している、と思う。その結果、読み進めるうちにどんどん感情移入していき、自然に泣いてしまうことになる。

 作品論で工藤氏はこのように書いている。

 「私などは改めて高橋揆一郎氏のこうした三篇に接して、彼のあと、そろそろ新しい深沢七郎が北海道から出て来るように思う。フォークロアとしての小説言語がなければ、何も残るまい。高橋揆一郎氏は、北海道の炭山に膨大に流れ入って死んでいった人々の、不条理に輝いた、人生の痕跡を、フォークロア「昔話」というように語り、希望の糧としたように思うのだが。おそらく氏は、泣きながら、祈り、また笑いながら、そして涙をこらえながら書いたのだと思う」

 「氷かんざし」なども北海道の炭鉱地という土着に徹底的にこだわり、無名の人々の人生の痕跡を性の匂いも滲ませながら強い感興をもたらす。

 工藤氏は高橋揆一郎との対比で、深沢七郎にも触れているが、深沢の作品も読みたくなった。
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by saiseidoh | 2013-03-11 21:16 | 文学・小説 | Comments(0)

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