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新しい哲学を求めて


管理人:宮内義富、札幌在住。主に本や雑誌、ジャーナリズムを通して、人間社会のあるべき姿を考えていきたいと思います。
by saiseidoh

本多秋五「物語戦後文学史」

 図書館より借り出した本多秋五「物語戦後文学史(全)」(昭和41年、新潮社)を読み続けている。

 若い時には実感として感じられなかったが、戦後を生きた作家・文学者の“懸命さ”が痛切に心に響く。

 そして、この力作を終生のライフワークとしてまとめた、本多秋五の見事さ。この本が書かれ、刊行されたのは1966年(昭和41年)である。

 あとがきから-。

 …現在では、戦後文学は作日の夢であった、とするのが文壇の・支配的傾向である。のみならず、戦後文学はまったくの虚妄であったとする見解が、堂々と大手をふってまかり通っている(実例は諸君の眼前にある。)

 刻下の文学的現実を見よ、というかのようである。では、刻下の現実は虚妄ではないか? 戦後文学の虚妄なるは、戦後のあとの文学の虚妄なる以上には出ない。そう私は信じている。

 私は戦後文学者たちの驥尾に付した一人として、人生のもっとも多感な時代をあの息詰まるような15年戦争のさなかに生き、やがて急転直下、戦後の時代に投げ出されて、日本と日本文学の新しい可能を夢見たものである。一身にして二世を経験したものである。この体験を忘れえないのが自分の宿命であり、それを忘れないのがまた自分の責任だと思っている。そんな私の気待ちは本書のどこかに出ているだろうと思う。

 日本人にとって「戦後体験」とは一体何であったか? それはまだ総体として捉えられていない。それが捉えられたとき、はじめて「戦後体験」は「戦後体験」として日本人の思想に定着する。この書物がそうした仕事の一部に幾らかでも寄与することができたら、私はうれしい。
             
                     一九六六年二月
                          本多秋五
本多秋五「物語戦後文学史」_d0289139_758194.jpg

by saiseidoh | 2014-05-16 08:11 | 文学・小説 | Comments(0)

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