彩生堂備忘録


店主:宮内義富、札幌在住。「本の力」「人の力」が必要な時代です。ものごとを、明治以降生まれた様々な思想や文学、社会学、医療や医学、性その他に関する学問・研究など、多面的な物差しで見ていくことの必要性も痛感します。
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インターネット草創期

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 時代は本当に変わるものだ。今日はインターネットの話である。

 今から20年ちょっと前。インターネットは全国の大学の工学部や医学部の研究者らから始まった(と思う)。それも本来の研究分野ではなく、少し脇道にそれた、しかし、自分の研究分野にすぐ戻っていける、というような関係性の中で。

 「別冊・医学のあゆみ―ホームページへの招待―医学・医療におけるネットワーキング」(医歯薬出版)はそうした時代の熱気を垣間見させてくれる。

 当時はネットと言えば、メールと、この本で取り上げられたホームページがメインだった。ブログもソーシャルネットワークもまるでお呼びでなかった(影も形もまだなかった)。

 大学での最近の取り組みや状況はあまりわからない。

 ネットが“悪貨が良貨を駆逐する”とならないためにはやはり知識人やそれぞれの現場でいかに流れる情報の質を向上できるか、だと思う。
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by saiseidoh | 2012-12-30 18:28 | 医学・医療 | Comments(0)

園子音「希望の国」・「非道に生きる」

 年末は映画の世界でもベストテンの時期である。

 園子音監督の評判、映画への評価が高い(いろいろな意見があるのだろうが…)。原発(?)のことを真正面から描いた「希望の国」、そして東日本大震災後の世界を描いた「ヒミズ」。

 ついこの間、再放送されたNHK-Eテレ・ETV特集「映画にできること 園子音と大震災」を見た。「希望の国」制作にかかわるドキュメンタリーだ。

 「非道に生きる」(朝日出版社)を知って以来、園監督には強い興味を持ったが、単なる話題性だけの人ではないようだ。

 ETV特集の中で桜が咲く廃校(原発の影響でみんな避難した地域なのだろう)校庭で園監督自身とナレーションが自作の詩を呟く場面がある。心に届く詩だ。

 「…政治家がやらないなら…芸術家がやれ…」といったニュアンスの件に虚を突かれる。そうか。震災といった大きな課題も日々の政治課題も社会問題も大きく捉えれば、人類の課題ではないのか…。その意味では政治家も芸術家も役割は平等であり、同じだ。責任も同じだろう。ということは、私達一人一人も原発につながり、政治につながり、事件につながってはいないのか…。

 園監督の本気度を思う。もちろん、原発以外の全てについて、それは同じ気がする。

 残念ながら、園監督の映画自体を1作も!観ていないのでわからないが、映像的、映画表現的にも優れたもののように思える。

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    (大好きなタルコフスキーや辻邦生等の映画本)


       

非道に生きる (ideaink 〈アイデアインク〉)

園 子温 / 朝日出版社

 
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by saiseidoh | 2012-12-29 07:56 | 映画・映画の本 | Comments(0)

「関寛斎」が売れた…そして「文化」の力

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(東海林さだおの棚=これも大切な「文化」だ)

 「関寛斎」(陸別町教育委員会刊行)をヤクオフで初めて購入していただいた。入札者は四国の方お一人で、結局その方にお譲りすることになった。ヤクオフ初出品にしては反応もあり、スムーズに成立し、とても嬉しい。資料・冊子を今後活用していただけるだけで有意義ではないか…。

 朝、通勤途中のラジオで月尾嘉男氏(東大名誉教授)がこんな事を言っていた。今後日本は2050年ぐらいまで経済力は低下する一方である、高齢者が多くなる国なのだから当たり前。中で力を入れるべきは「文化」「研究開発」「人材育成(人)」の3つである、と。

 なるほど。日本にはこうした資源がまだまだ埋もれている。月尾氏は物事を大きな視点でわかりやすく伝えてくれる。

 予算やお金も公共事業に+αし、こうした分野につぎ込む工夫が必要なのだろう。その伝でいけば、「関寛斎」といった過去の有為な人材や、それを紹介する資料、本…こうした人やものはとても貴重なはずである。一つひとつの地道な積み重ねが「文化」を生む。少し大袈裟ですが(笑い)。私達がやるべきこと、取り組むべきことはたくさんある。

 ただし、何でもお金をたくさん注ぎ込めば必ず成果が出る、という訳では決してない。創意工夫も必要だろうし、思想、センスも必要だろう。

 古本・リサイクルブック業界で言えばビジネスも大切だろうが、「文化発信力」といった視点も少し考えて欲しい。

 
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by saiseidoh | 2012-12-27 20:30 | Comments(0)

私家版さまざま…

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 本とコーヒー好きの私にとって垂涎が出そうなのが、この本、「本と珈琲」である。当時、取材で出入りしていた、北海道大学循環器内科助教授・田辺福徳先生が定年退官を機にまとめた私家版・随筆集だ。

 冒頭、早速、「本と珈琲」と題するエッセーが目に飛び込んでくる。先生が学会参加や仕事の合間を縫って通った全国の喫茶店が古書の記憶とともに、楽しく語られる。店内に広がるコーヒーの香りとともに…。

 エッセーで触れられる本は、日本近代文学の中でも先生の好みなのか、詩集がやや多い。伊東静雄『わがひとに與ふる哀歌』、小林秀雄『酩酊船』…など。小説では堀辰雄の本の紹介もかなり多い。北海道・長沼町出身のマルクス主義者・野呂栄太郎なども取り上げられ、それぞれに貴重な随筆・論考ではある。

 田辺先生は循環器内科が専門で、わが国における心電図の歴史の研究については第一人者でもある(『心電図の歴史』という研究本もある)。古書とコーヒー好きと、心電図の歴史―。このミスマッチが楽しく、文化の深さをも示していると私は思う。

 私家版にはさまざまある。非売品、値段が付いているもの、豆本…共通するのは本と文化を愛する、そのマニアぶりだと思う。全国津々浦々から集めれば、これは楽しいコレクションとなりそうだ。

 手元にはまだいくつかの私家版があり、ISBNコードなしの、豊かな世界が広がっている。
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by saiseidoh | 2012-12-23 14:27 | 文学・小説 | Comments(0)

原子力・原発本

 原発・原子力発電に関する議論をしたり、話題にすることは結構厄介だ。「賛成」あるいは「反対」ないし「脱原発」にしろ、それを話題にすることは何か落ち着きがよくない。どちらの考えであろうと、感情や「立場」が先立ってしまい、議論にならないからだろうか…。

 そうした中、『原発のコスト―エネルギー転換への視点』(岩波新書、大島堅一著)が第12回大沸次郎論壇賞を受けた。大変評価が高かったので、いつものように(?)比較的入手しやすい同著者による違う本をアマゾンから早速取り寄せた。
 
 『おしえて!もんじゅ君―これだけは知っておこう原発と放射能』(平凡社、もんじゅ君著、大島堅一・左巻健男監修)。ツイッターで有名な高速増殖炉のゆるキャラ、もんじゅ君に寄せられたたくさんの疑問・質問にわかりやすく答えた内容を活字化したもの、とか。確かに子供にも大人にも興味深く読めそう。新たに知り得た知識もあった。

 原発と言えば、当方にとっても接点があるということでは下北半島での歴史が興味深い。いかにして現在の原子力行政および地域がその歴史を辿ってきたのか? 『検証 むつ小川原の30年 』(江波戸宏 著、デーリー東北新聞社刊)はその重い歴史と地域が政府の政策によりいかに振り回されてきたか、が具体的に大変よくわかる(と思う=未読なので推測です。すみません)。しかしながら、今回の総選挙の結果でわかるように、脱原発の流れは訪れるようでなかなかやってこない。原発の地元はやはり、「経済優先」「原発(や関連施設)が今なくなったら地域経済が立ち行かない…」ということなのだろう。あの福島の大事故を経験したにもかかわらず、である。地域住民の意識を問うより、永年にわたって政府が進めてきた(時に強引、暴力的に…)その原子力政策を批判的に振り返らないとならないと思う。

 それにしても、デーリー東北という南部(青森県三八・岩手県北部)のローカル紙は社員200人弱の小新聞社だが、骨があり、粘り強い。その気骨がある所を今後も示しそうである。原発は革新、保守、あるいはイデオロギーに関係なく、その見直しの議論が必要な技術・ものになってしまった。

  当方の書庫にも原発関連本は確か多数あったはずだが、今では『ぼくの町に原子力船がきた』(中村亮詞著)、『科学文明に未来はあるか』(野坂昭如編著、いずれも岩波新書)など数える程しかなくなってしまった。他の領域・分野でも同じだろうが、殊に原発関連では内容が濃い、真摯に書き上げた本が議論の材料としては絶対に必要だろう。そして、感情的にならず自由に、風通しがよい議論がいつでもできること。政策決定も同様。それが大切でしょう。そう言えば、私が所有していた『原子力戦争』(田原総一朗著、筑摩書房)という本もかなり昔に古書店行きとなってしまった。若き田原総一朗の渾身の一作、力作であった。
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原発のコスト――エネルギー転換への視点 (岩波新書)

大島 堅一 / 岩波書店

検証 むつ小川原の30年

江波 戸宏 / デーリー東北新聞社


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by saiseidoh | 2012-12-20 21:10 | Comments(0)

関寛齋・荻野吟子

 d0289139_19164076.jpg当地・北海道は予てより開拓精神に富む人材が全国から来道したようで、歴史を紐解くとさまざまな歴史・エピソード、人物を見出すことができ、私達日本人がこれからどうやって生きていくのか、参考になるような先人が各分野に溢れている。

 道南に車で家族旅行に行った折、ルートに瀬棚町もあった。そこで初めて荻野吟子を「日本女性第1号の国家資格を持った医師」と知った。そして記念・顕彰する小さな記念碑も(訪れたのは20年以上も前であまり記憶が定かでない)。記念碑などをカメラに収め、彼女の小伝「荻野吟子」(荻野吟子女史顕彰碑建設期成会編集、初版昭和42年12月10日)も購入。

 吟子は女性医師第1号で、渡辺淳一の『花埋み』(新潮文庫)がその生涯を描いた伝記的小説として知られる。吟子は埼玉・熊谷出身だが、夫・之善の後から渡道、今金や瀬棚で診療所を開き、晩年はまた東京に戻っている。

 地域史や伝記にも大変関心があり、少々惜しかったが、小伝「荻野吟子」は最近、アマゾンに出品し、売れてしまった。

 同じ医師では、関寛齊という上総(千葉県東金市)出身の傑出した蘭方医もいる。道東は阿寒湖近くの陸別町に晩年の10年を捧げた縁で資料館がある。徳富蘆花と親しくトルストイ主義者で、72歳という高齢で開拓事業に全財産を投入、最後は自作農創設を志したが果たせず服毒自殺により自ら命を絶っている。

 司馬遼太郎は小説『胡蝶の夢』(新潮文庫、5巻)で寛齊を「高貴な単純さは神に近い」としている。

 これもあまり記憶がないが資料館で『関寛齋』(陸別町教育委員会編集・発行)を買い求めていた。

 当方はこの方を自分で文章化する予定はないので、やはり少し勿体ないが、活用いただけるご主人を期待して(笑い)近々ヤクオフに出品してみようか…(アマゾンではデータ登録されていないので)と思っています。

 北海道の、明治や大正、昭和時代を掘り起こすのは大変面白いし、意義深いことだと思う。
 

胡蝶の夢〈第1巻〉 (新潮文庫)

司馬 遼太郎 / 新潮社

花埋み (集英社文庫)

渡辺 淳一 / 集英社


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by saiseidoh | 2012-12-19 19:18 | 歴史 | Comments(0)

日本の突破口・関満博氏の諸著作

 『東日本大震災と地域産業復興』(全2冊、新評論)という本が最近刊行された。著者は関満博さんという長年、国内の中小企業や中国・東南アジア諸国の企業をフィールドワークしている方だ。

 私が知ったのはつい1~2週間ほど前に新聞の読書欄で、その本が紹介されていたからだ(朝日新聞)。特に「現場」にこだわり、実際に歩く中で課題を見出し、しかもその成果を現場に返し、共に育っていこう、という事にこだわっている、ということに強く惹かれた。若い頃からの経験として、実際に現場を歩き、さまざまな声を聴いていくことが、課題の解決につながることを身をもって私は知った。共感を寄せる方は多いのでないか。理屈や思想を語るより、まずは現場を見る、ということだ。

 『東日本大震災と地域産業復興』を本当は読みたかったが、何しろ全2冊、高額でサラリーマンの身にはとても手が出せない。そこで早速、Amazonで関氏の別著作、『現場主義の知的生産法』(ちくま新書)を頼み、即読破。

 

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by saiseidoh | 2012-12-16 18:39 | 経済・経営 | Comments(0)

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