彩生堂備忘録


店主:宮内義富、札幌在住。「本の力」「人の力」が必要な時代です。ものごとを、明治以降生まれた様々な思想や文学、社会学、医療や医学、性その他に関する学問・研究など、多面的な物差しで見ていくことの必要性も痛感します。
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高見順「詩集 死の淵より」

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 最近は無性に詩集を読みたくなる。どんな心の動きなのだろうか。

 古本屋やブックオフ等を巡る時も“詩集は置いてないかな?”と少しばかり探す。意外に置いていない。特に読みたい、と熱望する詩人のものは。ベストセラー的な詩集はある。まあこういうジャンルはお金を戴いても読みたくない(笑い)。

 昨夜も帰りがけ用事を一つ済ませ、時間があまりない、と思いつつ、また性懲りもなく、安売り系古本ショップに寄った。階段の途中にワゴンが置いてあるのだが、その中に33円で高見順「詩集 死の淵より」(講談社文庫)を発見。33円はちょっと可哀想だが…、手に取る。

 巻末の年譜によると、昭和39年(高見順57歳)8月に「群像」に発表、すぐに野間文芸賞を受賞した、とあります。

  望まない


 たえず何かを
 望んでばかりいた私だが
 もう何も望まない

 望むのが私の生きがいだった
 このごろは若い時分とちがって

 望めないものを望むのはやめて
 望めそうなものを望んでいた

 だが今はその望みもすてた
 もう何も望まない
 すなわち死も望まない

 高見順は翌年8月17日、58歳で亡くなります(元々の病気は食道ガン)。                                                                          

死の淵より (講談社文芸文庫スタンダード)

高見 順/講談社

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by saiseidoh | 2014-02-26 12:10 | | Comments(0)

実際に手に取り、読むということ

 本は実際に手にし、読んでみると、印象も読後感も相当に変わることがある。もちろん、イメージ通りの読後感の場合もある。どうあれ、実際に手に取り、自分で体験することが大切だろう。当たり前のことではあるが…。こうした行為はデジタル化ばかりが叫ばれる中、より一層重要になってくると思う。

▼大下英治著「日本共産党の深層」(イーストプレス新書)
 共産党、というだけで拒否反応を示す傾向が一部にあるが、白紙の状態で読んでみたい、と思った。時代は変わり、情勢・状況も変わり、学ぶべき事があるのでは、と読んだ次第。
 当初の印象と違い、少し、宣伝臭がする内幕もの、という感じでした。同党のいい事しか書いていない、という印象。アマゾンの評価がいいのは、身内やシンパシーを寄せる方があえて投稿したのか、とも勘繰りたくなった。参考になることがあるのかな~と今後も引き続き咀嚼します。
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▼沢里裕二著「淫府再興」(講談社文庫)
 エロス系の本も新しい趣向のものには興味がある。第二回団鬼六賞優秀作作品ということで、手にした。
 これがなかなかに凄い。予想を超える、斬新な表現や欲情を刺激する場面設定、意外な展開でとても楽しめた。官能小説系に興味はあるがそれほど読んでいないが、これは思わぬ収穫だった。この作者の作品は全て読んでもよい、と思える。
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by saiseidoh | 2014-02-25 17:03 | その他 | Comments(0)

仁科邦男著「犬の伊勢参り」

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 ここ数日、読み続けている。どなたも似たような反応を示すと思うが、「犬がひとり(一匹)で伊勢詣でするの?」。こんな興味から手にすることになる。

 自らのちょっとした経験からもわかるが、明治時代以前の和書・古典籍を読み解くのは相当にエネルギーと忍耐が要る。それでも素人にはとても歯が立たないことが多いように思う。
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 そうしたことを踏まえると、“犬の伊勢参り”を読み解くにあたり、著者は相当の和書、資料をあたっている。冒頭から最後までまどろっこしい事限りないのではあるが、やはりとても面白いし、興味深い。

 改めて、過去の時代を現代の目からのみで見ることはどうなのか?とも思わせる。多様・多彩・豊かな日本人の感性や種々雑多な事どもを記録に残す姿勢に敬意を表する。
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by saiseidoh | 2014-02-24 12:01 | ノンフィクション | Comments(0)

「犬の伊勢参り」等々

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 ここしばらくブックオフや同系統の店舗を覗いていたが、いつもだいたい、「これじゃ来なければよかった…」とひどい品揃えにガッカリしていた。

 という訳で、本日も懲りずにいつもはあまり寄らないブックオフへ。

 商品の入れ替えが活発な店らしく、珍しく購入意欲をそそられた本が何冊かあった。

 以下の通り。

 ▼五木寛之「親鸞(下)」(講談社文庫)▼柄谷行人編「近代日本の批評Ⅲ~明治・大正篇」(講談社文芸文庫)▼仁科邦男著「犬の伊勢参り」(平凡社新書)▼高取英著「寺山修司 過激なる疾走」(平凡社新書)
 ※4冊中には105円本も半額本もあります。

 こう見ると、特定の講談社文庫や平凡社新書…と偏りがあります。当方が好むものに偏りがあるのと、さらに時代時代により勢いがある・良書を出すシリーズ・プロジェクト等(優れた編集者と言ってもいいと思う)があるのでは、とも思わせます。

 古本安売り店も当地(札幌近辺)という前提ですが、何だかんだんと言ってもブックオフは他の安売りチェーンなどとの比較の上ですが、たまにいい本が置いてありそうです。

 本日はちょっぴり満足。
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by saiseidoh | 2014-02-21 19:01 | 街(町)歩き | Comments(0)

多様なもの・多様性

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 つい1週間ほど前の新聞広告で見て気になり、すぐにアマゾンで購入した。

 東海教育研究所の月刊『望星』3月号。今号の特集~“ご隠居”の起業、成功のヒケツ~に食指が動いた次第。しかし、この月刊誌が届いて感じたこと。

 『文芸春秋』とか、『世界』、『中央公論』などといった大手総合誌より、内容がむしろ、ユニークに感じられるのだ。大手雑誌はいつも読み慣れてるし、企画や特集記事も決まり切ったパターンが多いように思う。それに対し、読み慣れていないせいもあろうが、そればかりでなく、斬新な企画、読み応えがある記事が意外に多いのである。

 このカギは〈多様さ〉〈多様性〉という言葉にあるように思う。種々雑多の意見、話題、コラム…等々、目が見開かれる。やはり、どんな世界でも一律・一義的・均一でないもの⇒多様性こそが人間社会や文化の魅力なのではないだろうか?

 この伝でいくと、小さい媒体だから、といって消え去ってしまうことには賛意を抱き兼ねる。商売の論理、資本の論理がまかり通ると多様性までが否定されかねない。

 『望星』のブックレビューに前田速夫著「辺土歴程」(アーツアンドクラフツ)が紹介されていた。以下、書評抜粋。

「…姉妹篇『異界歴程』と本書の間には、三・一一の大地震、大津波、原発事故という今なお収束のメドが立たない変り目がある。またグローバル化の裏で貧富の格差や偏狭なナショナリズムが進行するなど、ますます空洞化する日本を嘆きつつ、著者は「はしがき」にこう記す。
 ≪だが、もしかして衰亡から免れる道があるとするなら、まずは何をおいても場所の力をよみがえらせて、われわれが遠い祖先から受け継いできた集団的記憶を取り戻すことから始めるしかない。≫(評・佐藤康智)

辺土歴程

前田 速夫 / アーツアンドクラフツ


 
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by saiseidoh | 2014-02-20 13:42 | 出版社 | Comments(0)

大下英治「日本共産党の深層」

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★セブンネット初利用―
 セブンネット初利用の本が届いた。この新書、大下英治著「日本共産党の深層」(イースト新書、920円+税)です。12(水)日に申し込み、手にしたのは15日(土)。まずまずのスピードでした。
 この新書を購入したのは、新聞広告で知り、共産党立党、小林多喜二虐殺…そして現在と戦前・戦後の同党の歴史、現状の“深層”が描かれていると期待したから。本の謳い文句にあるように「『自共対決』の時代へ」、本当にそうなるのか…。最近の政治状況・世相のひどさに、半ばの期待とこういう時は歴史に学ぶ姿勢も必要か、と思った次第。いずれにしろ、どんな組織も自由にモノが言える空気はないとならないだろう。

 新書が届き、少し驚いたのは、挟み込みの出版案内にある編集・発行人による『(イースト新書)創刊闘争宣言』。“大本営発表のウラにある人々の姿”に光をあて、そこから放射される熱を描く、という趣旨のようで、何か出版にかける“本気度”のようなものが伝わってくる。今の時代、こうした姿勢を打ち出した方が売れるのでは?という打算も少しはあるようには思うが…。新書創刊1年間近のようで、どんな本を出し続けるのか、ということにも宣言の本気度が問われるのだろう。

 ★佐野眞一著、東電OL事件関連2冊(新潮文庫)
 この文庫本2冊は示唆にも富み、大変興味深く読み終えた。アマゾンの評価では評価が相半ばしているようだが…。
 幅広く取材し、しかも関連する土地、人物にきめ細かく実際に会っていることに驚く。東電や司法・警察をめぐる状況や人々もきちんと書いてある。
 唯一、少し気になったのは、人物の評価等で特に断定的な書き方になり過ぎるキライが感じられたこと。もしかすると、橋本・大阪市長の連載記事ではこの傾向が災いしたのかも?と。時折、筆が滑り過ぎるように感じます。
 佐野氏の他の著作も含め評価は高いのも頷けるノンフィクションでした。
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by saiseidoh | 2014-02-17 12:18 | ノンフィクション | Comments(0)

セブンネットを利用する

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         (アンドレ・シフレン『理想なき出版』)

 本や古本に関心を持ち、実際に街を歩いたり、ネット等を利用したり…。街も従来イメージの古本屋さんはじめ、ブックオフ等の“安売り店”、営業店ではない図書館を覗いたり。

 まだまだ狭い範囲の経験だが、やはり本をめぐる環境はだいぶ変わってきているのだろう。新刊本、古本問わず、店舗営業が急激に地域から無くなりつつあること。替わって、“安売り店”が商売として成り立ち、従来イメージの古本屋も“安売り”に引っ張られているように見えること。

 当方も最近は街を歩いて、欲しい本を探しても見つからないせいで、どうしてもネットでアマゾンを利用してしまう。つい最近は新刊本で、セブンネットショッピングを初めて利用した。

 受け取りできるセブンイレブンを指定し、そこで到着後、現金決済すれば受け取れる。この方式だと送料、手数料がかからず、純粋に本の表示価格のみで購入できる。

 2日前の12日(水)にネットで注文。あとは何日程度で、どのような状態で届くのか。

 ここまでサービスが万全だと、わざわざ本屋には出かけなくなってしまうのかな…とも。

 しかし、古い世代の人間なので、本の手触りや本屋(新刊・古本・古書)は大切にしたい。それも、巨大になるばかりではない、小さくてもこだわりを持った本屋を。これは経済におけるグローバル化と同じ現象なのでしょうが、地域に多様なサービスがなくなり、しかも均一化することが人の生活を豊かにする事なのか、よくよく考えないとならない。

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by saiseidoh | 2014-02-14 12:51 | その他 | Comments(0)

佐野眞一「東電OL殺人事件」「東電OL症候群(シンドローム)」

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 佐野眞一氏の著者は初めて読んだ。ここ数日、この2冊を一気に読み続けている。やはり力作だと思う。

 かねてから何となく、東電OL事件には関心があった。たまたま帰りがけに寄ったブックオフにこの2冊が並んでいたので思わず購入(以前から方々にあり、105円の安売り状態だったのだろうが…)。

 佐野氏自身も文中でしきりに書いているが、長期にわたり氏が取り組んだ根っこには、この謎に満ちスキャンダラスに彩られた女性への“発情”といった、さもしい男の性(さが)があることは確かなのだろう。当方も同じ。しかし、2冊を読み始めると、それプラスそれを超える大変惹きつけるものを感じる。

 その要因はきっと、佐野氏の筆力であったり、幅広い取材・調査、ものの見方だったり、さらに描かれた女性の人生、司法・警察をめぐるさまざまな動きへの興味だったりするのだろう。

 氏は最近では、橋本・大阪市長を取り上げての週刊誌連載記事の中止で表だった活動はしにくいようだ。さらに、複数の著作で盗用・剽窃が指摘されている。難しい立場であることには間違いないだろう。しかし、評価されて然るべきものは評価されてよい。

 しかし…。いくら考えても価値ある本までも1円や105円としてしまう、現在の本の流通の成り立ちには納得できない。それは、(購入価格として)安いもの(本)は本としての価値も同様である、といわんばかりの扱いに対して、である。
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by saiseidoh | 2014-02-12 12:16 | ノンフィクション | Comments(0)

栗原哲也著「神保町の窓から」

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 アマゾンで注文していた栗原哲也著「神保町の窓から」(影書房)が届き、早速読み始めた。

 栗原さんは神保町にある、小出版社ではあるが、良質な本を出し続ける日本経済評論社の名物社長さん。この「神保町の窓から」が朝日新聞に紹介されて以来、関心を持ち、同社のホームページに掲載されているPR誌『評論』のコラム“神保町の窓から(抄)”を愛読してきた。

 何より、この栗原さんの明快な権力批判、弱い者を応援する姿勢が気持ち良い。「出版は資本主義には似合わない…」というつぶやきも一面の真理を突いている、と思う。

理想なき出版

アンドレ シフレン / 柏書房



 アンドレ・シフレン「理想なき出版」(柏書房)は硬派の出版人による欧米の状況を記したものだが、同じような“筋金入り”の姿勢を感じる(こちらも最近注文しました)。

 出版に「儲け」のみを求めると、良質な本は人類には残せないだろう。売れればどんなものでもよい、ということになってしまう。極端に言えば、出版にすらこだわらなくてもいい。儲かる事なら投機でもギャンブルでもいいことになってしまう…(言い過ぎですが)。そこにはやはり、良心や志しがなくては。
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by saiseidoh | 2014-02-07 19:18 | 出版社 | Comments(0)

花房観音著「寂花の雫」

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 花房観音著「寂花の雫」(実業之日本社文庫)をブックオフで見つけ、購入。花房さんという方には以前より関心はあったが、読むのは初見。

 まだ読み始めだが、京都を舞台とした官能小説?しかし、紋切り型の官能(ポルノ?)小説とは違い、文芸の香りがひと味もふた味もする。解説が桜木紫乃さん。この解説にも惹かれ、手元に置くことにしました。
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 ところで、この花房観音さんという方は第1回団鬼六賞大賞受賞者(その際の優秀作は深志美由紀著『花鳥籠』)。そして第2回大賞がうかみ綾乃著「蝮の舌」、優秀作が沢里裕二著「淫府再興」(講談社文庫)。こちらの沢里さんという作家にも惹かれますね。

淫府再興 (講談社文庫)

沢里裕二 / 講談社



 安手な紋切り型ではない、読み応えある官能小説も愉しみたい。
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by saiseidoh | 2014-02-05 19:21 | エロチカ | Comments(0)

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