彩生堂備忘録


店主:宮内義富、札幌在住。「本の力」「人の力」が必要な時代です。ものごとを、明治以降生まれた様々な思想や文学、社会学、医療や医学、性その他に関する学問・研究など、多面的な物差しで見ていくことの必要性も痛感します。
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“届かない声”

 厚生労働省は「医療・介護サービスの提供体制の改革」を進めるため関連法案を成立させ、具体的な対応を始めている。

 改革の目標年度は団塊の世代が75歳以上に達する2025年度のようだ。厚労省はこれまでもそうだが、医師会と一体となってさまざまな改革、制度設計、見直し、変更を進めてきた。かかりつけ医制度の推進、介護保険導入…時代時代によってさまざまな試行錯誤を繰り返してきた。思惑通りにならなかったもの、一部は成果を挙げたもの…等々、さまざまだ。

 かかりつけ医をあれほどまでに強調していたのに今はどうだろうか?在宅介護を一時あれほどまでに進めようとしていたのに、今はどうなのか?

 疑問や不信感は募る。

 そして、前期高齢者、後期高齢者を含め、圧倒的な多数が経済的弱者になってしまった現状をどう見るのか?そうした経済的基盤やエンディングに向けて看守りが必要なはずなのに人材や家族・身内が居ない人々の存在。

 そうした人達へのサービスや経済的に苦しんでいる圧倒的に多数の国民の声を反映しないならば、ただ単に形式を踏んだだけの計画倒れに終わってしまう。恵まれた人々はそうした形式主義の計画によっても救われるが、圧倒的に多くの国民はお題目だけでは救われない、どころか、悲惨なエンディングしか選択できない。私はそう思うのだが…。

 従来の国の施策に最も欠けているのは、財政的な課題のみ掲げ、予算をかけずとも、あるいは少ない予算でも可能なことに取り組んでこなかった(積極的でなかった)ことだと思う。検討段階から市民の声を真摯に聴こう、などと思っていないのだ。
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by saiseidoh | 2016-01-31 14:42 | 医学・医療 | Comments(0)

札幌医大界隈の古本屋・COML患者塾

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 COML札幌患者塾(第103回)に参加するため家を早めに出て、札幌医大周辺の古本屋を3軒回った。

 大通西23丁目にある「古本専門店らくだや」。この古本店は車で通りかかると、見えていたので、気にはなっていた。文庫や新書がたくさん並ぶほか、サブカルチャー関連、硬い本…と品揃えは豊富だ。しかし、本日はこれ、といった本は見当たらず何も買わず。

 続いて、札幌医大前の「ブックハウスQ」(南1西17)。ここもサブカルチャー関連他、品揃えは豊富だが、買いたい本はない。以前ここでは渡辺京ニ「逝きし世の面影」を買った。最後に市内ではめっきり減ってしまった古書店系の「並樹書店」(大通西19丁目)。ここはいつも外に均一ワゴンを出しているが、ほとんどいい本を出していない。今回も収穫なし。
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 ◆第103回患者塾「賢く生きて、終活するには」(話題提供・中田ゆう子代表世話人)

 終活、エンディングなどをテーマに開かれた。テーマの関係上か、50〜70代前後の方々が多かった。いずれの方々も、人生の終わりを、「選べる時代」になったことへの共感はありつつ、一部はビジネスとなってしまっていること、看取ってくれる人が居ないことへの不安などが語られていた。

 私は少しだけだが、この話題には現実感がない。しかし、経済的弱者や身寄り、頼る人がない場合の不安、心細さは幾ばくか、と思う。しかも、年金などに頼れない人々が大多数であってみれば、この問題はとても根深く、広く医療や福祉の課題も抱えつつ、国があてにできないなら、英知を集めて前進しなければ、と考える。
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by saiseidoh | 2016-01-31 09:46 | その他 | Comments(0)

大佛次郎賞・論壇賞

 今朝の朝日新聞朝刊に大佛次郎賞・論壇賞の贈呈式があり、受賞者のスピーチなどが紹介されている。

 金時鐘さん(詩人)、井手英策さん(慶応大学教授)のスピーチが印象的だ。

 「…経済が主人公となっている時代に対して異議申し立て、抵抗の声をあげる思いを込めてこの本は書かれました。経済的に恵まれなくても、一人ひとりが自分の生き方を選択できるような時代をつくる義務が私たちにはあると思います。理不尽を終わらせ、社会の中に公正さを埋め込み直す。無謀にも思えるような主張ですが、一人でも多くの人々の胸に届くことを願っています」

 今日はこれからCOML札幌患者塾の例会に参加してくる。

経済の時代の終焉 (シリーズ 現代経済の展望)

井手 英策 / 岩波書店


分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略 (筑摩選書)

井手英策 / 筑摩書房


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by saiseidoh | 2016-01-30 09:36 | ジャーナリズム | Comments(0)

本を旅して・「原初の風景」③

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 「風景」に関心を寄せるようになって、その思想に共感を覚えたのは、内田芳明「風景とは何かー構想力としての都市」(朝日選書)だった。

 「『風景の喪失』…、これは現代の文化状況の中での人間の『心の喪失』の進行とパラレルな現象だということです。運命的力として私たちを支配しております資本主義的営利経済と大衆民主主義と管理社会強化という現代の私たちの生活条件の中では、私たちの人間の心の自由とか人権は次第に奪い去られてゆきますし、それらを保障してくれるはずの法的保障も実際には空文化していきつつあります。にもかかわらず私たちは、わずかに残されている人間としての高貴さや品位や自由を自ら守っていかなければならないのです。…」

 自由、人権…こうした人間らしさの源泉は風景とパラレルだというのです。この本は都市の風景を主眼に扱っていますが、これは自然も都市も町も同じです。風景の喪失は人間性の喪失と同じである、と。

 この本が書かれたのは1992年です。もちろん、内田氏の中ではそれ以前から同様の問題意識はあったでしょう。

 自然破壊や都市風景に構想力が見えないことは、人間性の破壊である。そうした厳しい自己認識を持つことが必要だろう。
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by saiseidoh | 2016-01-29 06:30 | その他 | Comments(0)

懐かしい人・山川方夫

 毎日なぜこんなに悩み、思い惑うことの日々なのだろうか?先日の道新書評で山川方夫の名前を久しぶりに見た。この人はいつも、懐かしさに満ちている。

 山川方夫著、坂上弘編「展望台のある島」(慶應義塾大学出版会)。没後50年を機会に編まれたアンソロジーという。

展望台のある島

山川 方夫 / 慶應義塾大学出版会


知の教科書 フランクル (講談社選書メチエ)

諸富 祥彦 / 講談社


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by saiseidoh | 2016-01-28 07:08 | 新刊 | Comments(0)

「心に太陽を くちびるに詩を」

 「日本の古本屋」メールマガジンが定期的にメールで届く。昨日はメールマガジン中、紹介されていた次の本が目に付いた。

 Pippo著「心に太陽を くちびるに詩を」(新日本出版社)。私も大好きな新美南吉や原民喜など、多数の近代に生きた詩人たちを紹介している。新日本出版社刊、というのもいい。最近は権力者、大企業、弱いもの・弱い立場の人たちを配慮しない勢力…そうした集団を生理的に受け入れなくなった。

心に太陽を くちびるに詩を

Pippo / 新日本出版社


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by saiseidoh | 2016-01-27 07:16 | | Comments(0)

「日中画人往来十選」

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 日経文化欄に昨日25日付朝刊(北海道地域)から呉孟晋氏(京都国立博物館主任研究員)が「日中画人往来十選」という連載を始めた。

 近代、両国に足音を残した画家たちの作品を紹介する好企画。小文ながら、とても面白い。2回目の本日は、日本に学び、左翼芸術運動を担った許達「自画像」にまつわるエピソード等を紹介し、「昭和に入って潰えた日本のプロレタリア芸術の遺伝子は、隣国で花開いたのである」と結ぶ。

 日経文化欄はやはり面白い。
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by saiseidoh | 2016-01-26 07:20 | 美術 | Comments(0)

本を旅して・「長いお別れ」

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 レイモンド・チャンドラーの名は実は映画「ロング・グッドバイ」(1973年公開)を観て初めて知ったように思う。

 映画「ロング・グッドバイ」。チャンドラーの「長いお別れ」を原作に、監督ロバート・アルトマンがエリオット・グールドを、猫を愛する秀逸な探偵フィリップ・マーロウに仕立てた。ロサンゼルスの街並みやグールド、そして猫が画面に醸し出す不思議な魅力に一瞬で引きずり込まれた。だから、原作としての「長いお別れ」をすぐに買ったのだろう。

 「長いお別れ」を読むとき、どうしても映画のグールドの姿に支配されてしまう。

 この映画をすすき野にあったジャブ70ホールで観た前後。なぜそのような事になったのか、記憶も定かではないが、すすき野の外れにあった某ホテルで休日の朝、夢を見ながら目が覚めた。一瞬どこかと訝しんだが、すぐにホテルの一室と気がついた。外を見ると、雨がシトシトと落ちていた。古いガレキと寂れた飲み屋街の風景。なぜかそのとき、「ロング・グッドバイ」の舞台となったロサンゼルスの下町に居る錯覚を覚えた。

 ちなみに。「長いお別れ」は清水俊二訳に慣れ、どうしても村上春樹訳にはついてゆけない。村上春樹はどうしても、私には軽すぎる、という印象が拭えない。マーロウの雰囲気も描き出せていない。村上春樹が好みでない、誤解と偏見かもしれないが(苦笑)。

話は脱線し過ぎだ、と承知の上だが、村上春樹はノーベル賞を受賞しようかと毎回騒がれるほどの作家。一方、清水は戦後多数のミステリー、チャンドラーの翻訳家として名を成した人だが、 チャンドラー訳に関しては清水に圧倒的に軍配が上がる。

時代が変わった、とも言える。私たちが生きる時代は、言葉に重さも、風情もなきに等しい。と、閑話休題だが…。

 「長いお別れ」と「ロング・グッドバイ」はすすき野の裏寂れた街並みとよく合う。勝手に私がそう思っているだけだろうが。思えば30年以上も前の話だ。

映画を観たジャブ70ホールも、本を買った書店も、そしてあのホテルも今はない。そしてすすき野の街並みもすっかり変わった。

 日々の生活は単調に繰り返される。一方で、本を読み、映画を観た記憶は心の中に刻み込まれる。さまざまな本や映画、映画館、書店、街並み…。人が生きていく上でさまざまな舞台は貴重・稀少な装置であり、それでこそ辛く、厳しい人生の旅を続けていくことができる。
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by saiseidoh | 2016-01-25 06:26 | その他 | Comments(0)

「生きる命 十選」

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by saiseidoh | 2016-01-24 12:12 | その他 | Comments(0)

本を旅して・“原初の風景”➁

 森有正「木々は光を浴びて、…」

 森有正の文章はどれも心に響く。どの文章が、どの随想のどの箇所にあったのか、を探すのはとても難しい。森はあるいはずっと同じテーマを書いていたのかもしれない。しかも、同じテーマでありながら、複層的な様相を示す。森はバッハの(パイプ)オルガン曲を自ら弾くのを無上の楽しみ、習慣としていた。そんな事もその一端なのかもしれない。

 「…北海道へは生まれて始めてやって来た。そして来てよかったと思っている。この間、支笏湖へ数日行って、殆どスイスの湖水を思わせるその美しさに驚いた。ホテルの窓からは、嵐を含む暗い荒天の下に、斜めに夕陽を受けて白銀のように輝きながら波立つ湖が山にかこまれて拡がっていた。湖水は原生林に囲まれ、最近、羆が湖畔の高速道路まで出て来たと聞いた。湖水で養殖されている姫鱒も、鮭のような赤い肉をしていて、本当に美味しかった。小樽では、岬の突端にある水族館で、大きい海馬(とど)や海豹が冷たいそとの海水が白い泡を立てて勢よく入ってくる自然岩を利用した水槽の中で元気に泳ぎ回っていた。ここでは裸の自然が、すなわち人を孤独にする自然が、到るところにまだある。…」 (木々は光を浴びて、…)

 この文章は自然や原生林、原初の風景…も終生のテーマとした森らしい、美しい文章だと思う。

 私も、森がここに書いた支笏湖、小樽の岬…などには折に触れて複数回訪れている。森が「木々は光を浴びて、…」を書いたのは、昭和45(1970)年11月。すでに46年の歳月が流れている。これらの自然や風景がどれほど変貌を遂げたのかは、誰もわからない。

 そして、森は晩年にパリから日本に一時帰国すると、北海道を併せて頻回に訪れている。その自然に接することや、知己の人と会うこと、北大でパイプオルガンを弾くため…などが目的だった。

 それらを通して、森が著作に残し、私たち日本人や人類に提起している問題・課題は決して古びてはいない。

 ※「木々は光を浴びて、…」は、次の2書に収められている。

 ▼「木々は光を浴びて」(筑摩書房)
 ▼「思索と経験をめぐって」(講談社学術文庫)

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by saiseidoh | 2016-01-23 12:23 | その他 | Comments(0)

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